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@ideavalu · 2026年6月15日
【Maker Interview #002】 「うつをなくしたい」
AI時代に自己肯定感が崩壊すると確信した、早稲田2年生の挑戦

早稲田大学に、ある学生がいる。 名前は辻野環(つじのたまき)さん、20歳。商学部2年生。 「うつをなくす」というビジョンを掲げ、学生団体「メルヘン」を運営している。メンタルヘルスに取り組む学生団体としては珍しく、事業として自走させることにこだわっている。 高校時代に身近な人のうつに気づけなかった経験から始まり、今では「AI時代にうつが拡大する」という独自の問題意識を持つに至った。その確信はどこから来たのか。話を聞いた。 うつとの出会いは、高校1年の6月だった — 自己紹介をお願いします。 早稲田大学商学部2年の辻野環と申します。「うつをなくす」ことをビジョンに、学生団体メルヘンを運営しています。よろしくお願いします。 — 学生団体を立ち上げたきっかけを教えてください。 高校生になった6月、初めてうつと摂食障害の相談を受けました。相談してくれた方は、学校では特に元気がない様子はなかったので、気づけなかった自分にとっては衝撃でした。 その後なぜか、うつの相談を受けることが増えました。そのたびに「こんなにも身近に、うつは存在しているんだ」という確信が強くなっていきました。 — それが今の活動につながるんですね。 大学に入り、「うつをなくしたい」と会う人全員に話し続けました。多くの人が応援してくれて、中には「同じことを言ってる子がいるよ」と繋いでくれる人もいました。 そうして知り合った仲間たちと団体を立ち上げました。メンタルヘルスに関心がある学生は稀なので、お互いに興奮し意気投合したのを覚えています。 起業コミュニティで見た、リアルな自己肯定感の崩壊 — AIによって人の自己肯定感が下がるという問題意識について、どんな場面でそれを感じましたか? 実は最初から「AIによるうつ」をターゲットにしていたわけではありません。 大学1年の頃から起業したい学生のコミュニティによく顔を出していました。そこでは情熱ある若者が互いにビジョンを語り合い、起業への熱意に溢れていました。しかし1年も経つと現実が見えてくる。「起業する」と簡単に言えなくなり、「起業できていない自分」への焦りが生まれる。成功する未来を妄想できなくなった時、自分を肯定できなくなるんです。 そういう同期を何人も見てきましたし、大学2年の今、自分自身もそう感じています。 — 自分自身の経験というのは? 2月に中途採用支援の事業を代表として始めたんですが、内定承諾してくれた方には逃げられ、売り上げの見込みはなくなり、メンバーは空中分解しました。4月には副代表をやっていた団体が、石破茂講演会を実現した直後に崩壊しました。 そうした経験から、「時間はあるし挑戦しているのに、自分のビジョンを実現できていない時、人は自己を肯定できず、うつになりえる」ということが身に染みてわかりました。 AI時代に、なぜうつが拡大するのか — それがAI時代とどうつながるんですか? AIによる作業効率化により、将来的に多くの人が「暇」になります。所属や労働によって得ていた自己肯定感が失われる。暇な時間に自己実現を目指すが、うまくいく人ばかりではない。さらに人間の原始的な脳は、暇な時間に本能的にネガティブな思考をしてしまいます。そしてうつになる。 産業革命以来、技術革新は一部の労働者のアイデンティティを奪い、うつをもたらしてきました。AIの場合は影響を与える範囲が広く、より多くの人が実存の危機に晒されます。 労働集約には限界がある — 活動を通じて手応えを感じた瞬間はありましたか? それがほとんどありませんでした。力になれるのは自分の手の届く範囲だけで、せいぜい知り合いの知り合いが限界でした。 仕組みとしてうつをなくすために、toB向けの人事サービスや一般社団法人なども考えました。でもどれも抜本的な解決につながるとは思えなかった。 うまくいかない経験が積み重なるほど、問題の根深さと自分のビジョンへの確信が強くなっていきました。 読者へのメッセージ — 同じような問題意識を持つ学生・若者へ一言お願いします。 ぜひお話ししたいです。一緒にやるやらない、ビジョンが一致するしないは別にして、1人で抱え込まないことが大切です。うつをなくしたい人がうつになるなんてこと、あってはいけませんから。 編集後記 「うつをなくしたい」という言葉は、よく聞く。しかし辻野さんの言葉には、自分自身の失敗と葛藤が滲んでいた。 事業が空中分解し、団体が崩壊する経験をしながらも、ビジョンを語り続けている。その強さは、きれいごとではなく、リアルな痛みの上に立っている。 AI時代にうつが拡大するという予測が現実になる前に、辻野さんの問いに答えが見つかることを願っている。
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